姿勢調節チューニング装置BASYSの有用性
【はじめに】
中枢神経性疾患における歩行は亢進状態である筋緊張の調整に難渋する事を経験する。
河島は中枢神経性疾患の筋緊張は病態によるものばかりでなく、
様々な要因にて意識下により表出される緊張と混在すると述べている。
そこで今回、河島が開発した姿勢調節装置(以下BASYS)を
脳卒中片麻痺患者に施行し随意制御と反射調節のバランスを潜在的に調整した結果、
歩行にどのような効果を与えるのかを検証した。
※河島則天>>詳細はコチラ
(国立障害者リハビリテーションセンター研究所 運動機能系障害研究部 神経筋機能障害研究室長)
【対象】※画像はイメージです。
1.当施設を利用する慢性脳卒中片麻痺患者(50代男性、60代男性)2名。
発症後6ヵ月以上が経過し、歩行機能の評価を介助なしで実施可能な者とした。
【方法】
2.介入 BASYS(テック技販社製)のプラットフォーム上に対象者が立位運動(前後動揺のみ)にて
それをリアルタイムに検知し、対象者の知覚にのぼらないレベル(動揺に対し10%)で
プラットフォームが増幅方向または減少方向へ移動するという介入を行った。
立位運動は足関節中心の重心前後移動を意識させた。
また、対象者の前後運動に対し、
運動方向にプラットフォームが追随するインフェイズモード(以下、IM)と
運動方向とはプラットフォームが逆に動くアンチフェイズモード(以下、AM)を
各々60秒2セットとした。また、各モード共異なる日に施行した。
3.評価 介入前後において自然歩行(10m)を行い、その様子を矢状面から
カメラ(Logicool社製 HD Pro webcam C920)にて固定撮影後、動画解析ソフトkinovea(Kinovea-0.8.23)を用いて解析した。
解析内容は①ストライド長②立脚相時間③遊脚相時間の3項目を麻痺側、非麻痺側共に抽出し比較した。
【結果】
①IM介入前後の麻痺側ストライド長の差は症例Aは0.16cm、症例Bは6.86cm。
非麻痺側では、症例Aは2.71cm、症例Bは6.12cmであり、
麻痺側、非麻痺側共にIM介入後にストライド長の延長があった。
②麻痺側立脚時間の差は、症例Aは0.12秒、症例Bは0.03秒。
非麻痺側立脚時間では症例Aは0.04秒、症例Bは0.05秒であり、IM介入後に立脚時間が延長した。
③AM介前後の麻痺側ストライド長の差は症例Aは-6.9cm、症例Bは1.16cm。
非麻痺側では症例Aは-5.49cm、症例Bは-2.11cmであり、1症例の麻痺側ストライド長を除いては、
AM介入後にストライド長の短縮傾向があった。
④麻痺側遊脚時間の差は、症例Aは-0.06秒、症例Bは-0.12秒。
非麻痺側遊脚時間では症例Aは-0.03、症例Bは-0.01秒短縮した。
【考察】
河島によると、一般に随意性が要求される運動では脳の貢献が大きく、
歩行や立位姿勢など自律的な運動では脊髄の貢献度が相対的に大きくなると言われている。
つまり、歩行運動の基本的なパターンそのものは、
中枢神経系の低位の階層に位置する脳幹と脊髄の神経ネットワークにおいて生成されており、
高位中枢がこれを制御・駆動するという関係性の上に歩行運動が成り立っている。
脳血管障害片麻痺患者の場合、この神経ネットワークから逸脱し脳の貢献が高くなるために、
過剰な筋緊張がみられ異常歩行を増悪させている。本研究においてIM介入は実際の重心動揺を減幅すことができ、
結果②で麻痺側、非麻痺側共に立脚時間が延長して下腿三頭筋の反射の感受性を低下しさせストライド長が延長したと考えられる。
対してAM介入は重心動揺を増幅でき、結果④で麻痺側、非麻痺側共に遊脚時間が短縮していることより反射の感受性が高まり、ケイデンス効率が高まりストライド長の減少に寄与したと考えられる。
【まとめ】
随意制御と反射調節の潜在的な調節が片麻痺歩行の緊張を減少させることが示唆された。
今後、症例数を増やした上での効果検証も行っていきたい。
歩行リハビリセンターHOKORU 奥村祐子
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研究まとめ
健康運動教室「健康トレーニングin月出」発足について
おうちでリハビリ ラシクアーレ 理学療法士/田中聖也
2015年熊本市東区月出にて健康運動教室「健康トレーニングin月出」を月に2回開催
・発足することになったのか
・発足するまでの経緯
・何がもたらせたのか
維持期片麻痺患者の歩行における短下肢装具の足関節固定と足関節可動による比較検討ゲイトソリューション
歩行リハビリセンターホコル 理学療法士/浅井清尊
通所介護の臨床において、脳血管障害者の短下肢装具の多くが障害を発症したときに作成した物であり、数年経過した現在では身体に適合しないケースが多数存在する。そこで本研究ではゲイトソリューション(以下GS)とシューホーンブレイス(以下SHB)をそれぞれ装着して歩行させ、その動作をカメラにて撮影し、歩容の違いについて比較した。
当施設利用時の歩行計測とその比較検討
歩数計速の有用性
歩行リハビリセンターホコル 理学療法士/佐藤文彦
一般的に身体活動量が多い者は疾患の罹患率や死亡率が低く、運動はメンタルヘルスや生活の質の改善に効果があるとされている。当施設来所時に万歩計を取り付け、利用終了までの3時間の歩数を計測し、今後の目標向上心を賦活できるように来所毎の記録に加え有効記録歩数を500歩以上とルール付けし、1回目と2回目の歩数を対応のあるT検定にて比較した。
潜在的な随意制御と反射調節が異常歩行に与える影響 姿勢調節チューニング装置
BASYSの有用性
歩行リハビリセンターホコル 理学療法士/奥村祐子
介入 BASYSのプラットホーム上で対象者が足関節を意識した重心前後移動を実施する。介入1をインフェイズモード、介入2をアンチフェイズモードとし、各モード異なる日に実施した。2.評価 介入前後において自然歩行を行い、固定撮影する。その後、動画解析ソフトを用いて①ストライド長②立脚相時間③遊脚相時間をそれぞれ非麻痺側、麻痺側から抽出し介入前後を比較した。
見られる私(セラピスト)
おうちでリハビリ「ラシクアーレ」 理学療法士/田上綾香
【前研究】失語症のある方とのコミュニケーションに難渋したケースについて、会話が進むきっかけとなったのが「記憶を辿る行為」であったことを報告。森岡(2014)は、以下省略「目の観察は心を読みとるために重要である」と定義。コミュニケーションツールは、「共通の記憶」を探る行為なのではないかと考えた。今回課題として随意的な行動の発現を起こす為、対象者が映っている過去の思い入れ深い静止画・動画、全く他人の動画の計3種類をリハビリテーション前に見てもらう。その後の、表情・発言・活動性の変化を観察した。
マニュアルとハラスメントについて
歩行リハビリセンター HOKORU 理学療法士/浅井清尊
今日のわが国の社会情勢を鑑みると、経済効率優先の裏面として社会モラルの低下が強く問われており、職業倫理感の不足や欠如に起因すると思われる事故や事件が表面化し、職業倫理破壊が始まったと言われている。そのような状況でどのように新社会人教育を行うと一人前として患者への対応が出来るようになるのか、また教育する側とされる側のメンタルストレスを減少させ効率よく教育できるのか。今回はマニュアル作成から実行を通して弊社の新人トレーナーのメンタルストレスの変動について報告する。
懐かしさと私
おうちでリハビリ「ラシクアーレ」 理学療法士/田上綾香
今回、右片麻痺と運動性失語症のある患者を担当し、コミュニケーションが上手くとれず、リハビリテーション介入に困難を要した。私とのコミュニケーションを避け、表情が硬く、自発的な運動の呼びかけに対し首を横に振るなどの拒否反応が頻回にみられた。しかし記憶を辿れるような介入を期に笑顔や感動を表現するなど感情の豊かさがみられ始めた。次第に自発的な行動もみられたため、この行動変容の意味づけを考察したのでここに報告する。
他職連携の円滑化を図るには〜自宅間取り図を介して〜歩行リハビリセンターHOKORU 社会福祉事/小平千遥
今年度の介護報酬改定により自宅訪問による生活状況の確認が義務つけられた。そこで弊社は独自に自宅訪問調査票に工夫を加えた。利用者が社会参加を果たせるために日常生活の改善・QOLの向上を強く意識したプログラムを理学療法士に依頼し、生活相談員が自宅訪問調査を行っても利用者の状況を把握していることから自宅での効果判定をスムーズに遂行することが可能である。今回このような効果の見られた点について、生活相談員としての介入方法も含め自宅訪問調査の工夫を紹介する。